社内バーベキューの組織的機能 (蓮台浩明さん『社員をバーベキューに行かせよう!』を読んで)

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。


さて、今回は『社員をバーベキューに行かせよう!』という本について、書評(らしきもの)を書きます。


この正月は、自分の修論や仕事と関連して「企業における理念浸透」について思うところを少しまとめていました。
その中で、自分が(コンサルとして)関わっていない理念浸透事例を知っておきたいなと思い、以前知人の方からいただいた本書を改めて読み返しました。



■どんな本?

本書は、浜松市にある工務店「都田建設」さんのお話。
理念浸透も含め、実際に都田建設さんでやっている組織施策のエピソードが書いてあります。
本書では、会社の組織をより良いものにするための施策例が多数紹介されていますが、
最も特徴的なのは、タイトルにもある「社内バーベキュー」。
なんとこの社内バーベキュー、平日の昼に「(社員)全員で毎週必ずやる」(P.59)というのだから驚きです。


一見すると、
「他の会社じゃ無理じゃない?」
「本当に意味あるのかな?」
といった考えも浮かびますが、本書を読むとどこの会社でも実現可能性があり、しかも会社の発展に寄与しうる施策であることがわかります。



■社内バーベキューの2つの機能


さて、会社でバーベキューをするという驚きの施策。
この施策を私なりに解釈すると、その機能は大きく2つあります。


1.会社からのメッセージを伝達する機能
この特徴的な施策を実施すること自体が、会社の理念、価値観、規律などを伝える機能を持っていると考えられます。
例えば、都田建設さんの合言葉は「想いをひとつに!」です。(p.3)その言葉を体現するかのように、バーベキューは全員参加が原則です。そして、時間は昼休みの一時間厳守のため、各人が役割分担して進めない限り、時間内に腹を満たすことができません。さらに、リーダーは持ち回り制になっており、誰か一人ががんばる構図にはなりえません。
つまり、社内バーベキューにおいても大事なことは「想いをひとつに!」であるというわけです。
また、この施策は社内だけでなく。社外へのメッセージ伝達機能も持っていると思います。社外の人(私含め)がこの施策の話を聞けば「面白い会社だな」「社員を大切にしている会社なんだな」と思いますからね。


2.従業員の学習機会を生みだす機能
二つ目は、社員にとって「自分で考えて、場をつくって、自分のすべき行動をする」(p.64)学習(教育)機会を生み出す機能です。
段取り、工程管理、予算管理(上限1万円)、リーダーとしての経験、他のメンバーをもてなすサービス、問題解決、仕組化など、バーベキューから学べることはたくさんあります。
社内施策であっても、そこに全員が真剣に取り組めば、必ず有益な学習が生まれることを都田建設さんの施策は教えてくれています。



■私が考える社内バーベキューのポイント


【ポイント1】
私は、社内バーベキュー施策の一番すごいところは「継続性」だと思っています。
どんな内容であれ社内施策を継続して、徹底的にやることはすごいことだと思います。
この「継続性」ゆえに、会社からのメッセージが伝わり、有益な学習が生まれ、みんなが成長する、という正のサイクルが回り続けているのでしょう。


【ポイント2】
もう一つ、このイベントの重要な点は社員の方が「楽しんでいる」ことだと思います。
社員の方の声は本書になかったので推測ではありますが、写真から伝わる雰囲気や、時に家族やお客様も参加していることを考えると社員の方自身が「楽しんでいる」ことが伝わってきます。


「楽しんでいる」ことがなぜ大事かというと、このような社内施策はともすると統制的な性質を持ち、施策が組織に対して負の効果を与えることがあるからです。
例えば、企画が面白くないとされたら上司・同僚からボロクソに言われるようなイベントだったら、「楽しもう!」という気持ちよりも「ちゃんとやんなきゃ・・・」という気持ちの方が強くなりますよね。
その場合、会社の一体感を高めることを目的にした施策が、会社への嫌悪を増幅する施策になることは十分ありえます。
また、このように統制的な性質が強くなり過ぎると、各社員が施策に対して内発的な動機を持つことができず、施策を継続するモチベーションが続かなくなることでしょう。


「社内施策が統制的になり過ぎてはいないか?」


私たちが社内施策を実施する際に、注意しなくてはいけない点だと思います。



■もし本書の続きを望むとしたら・・・


本書を読み終えて気になったのは
「この施策を社員の方はどのように捉えているのか?」ということです。
本書は社長視点からの語りがほとんどだったので、社員の方の語りも聞いてみたいと思いました。


前述した通り、本書から伝わってくる雰囲気から察するに、社員の方はこの施策を概ね肯定的に受け取っていると思います。しかし、施策を実施・継続する上では、何かしら苦労もあったでしょうし、疑問→納得→推進といった心理変化もあったと思います。
また、施策を実施・発展させていく主体は社長だけでなく、社員全員だと都田建設さんは考えているはずです。
社員の皆さんがどんな想いや意思を持ってこの施策を実施・発展させているのか、是非機会があれば聞いてみたいです。



全体を通して、実践的な内容が多いので、経営者の方をはじめ、経企・人事など会社創りに関わる方にはお薦めです。
また、35人の組織の話ですので、支社や部署のリーダーの方も活用できる内容ではないかと思いました。
参考までに。


社員をバーベキューに行かせよう! ―結束と成果はこうすれば生まれる

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