大震災後の就活(2) 就活生はどうすればいいのか?


前回のエントリでは「今回の大震災を経て何が起こっているのか、そしてこれから何が起きるのか」について書きました。
(ご意見いただいた皆様ありがとうございました!)
今回はその続編として「じゃぁ、就活生はどうすればいいのか?」ということについて書きます。


※前エントリも今エントリも、大手企業を中心に受ける就活生を対象に書いています。
 ベンチャー志望者、ましてや起業を考えているような学生さんにはあまり参考にならないかもです。そこはご容赦を。



■就活生全体に言えること


いろいろ考えてはみたものの、結論から言えば、
「就活生がやるべきことはあまり変わらない」
というのが私の考えです。(ただし、後述する「特に震災の影響が大きい学生さん」は別)
当初の予定通り、粛々と就活を進めていくことが一番重要だと思います。


このような考えに至ったのは、
(1)選考の長期化とピークの分散はあれど、就活の基本は変わらない。
(2)採用計画の変更は現時点で不確定であり、そもそも学生には変えられないもの。
と考えたからです。


(1)選考の長期化とピークの分散はあれど、就活の基本は変わらない
就活時期が変わっても、学生が志望動機(適合性の評価)と自己PR(スキルの評価)によって会社から選考されるという、就活の基本は変わりません。
景気の回復や就活の評価軸の変化などがあれば別ですが、少なくとも現時点ではそういったことは起きません。
ですから、学生さんは今まで同様、自己分析を行い、企業分析をし、スキルを高めるだけです。
なお、このことは同時に、就活時期の問題は就活に大した影響を及ぼさないことを示しています。


(2)採用計画の変更は現時点で不確定であり、そもそも学生には変えられないもの
採用計画の変化があれば、もちろん学生にも影響が出ます。
しかし、現時点で計画がどのように変更されるかを正確に予想することは無理ですし、
たとえ採用数が減って評価基準が高まっても、上記の(1)同様、学生がやることは変わりません。
変わることがあるとすれば、自己PRの評価をより高められるよう工夫することだけですが、それは震災前後関わらず同じです。


上記から「就活生がやるべきことはあまり変わらない」という結論に至りました。
しかし、これだけでは何も言っていないのと同じなので(苦笑)、いくつか付記します。



■就活生が注意すべきポイント


上記のように「就活生がやるべきことはあまり変わらない」と言いましたが、
これは「やるべきことをぶらさず、きちんとやること」が大前提となっています。


しかし、
・余震、原発問題、停電のことなど心配事が多く、以前よりも落ち着かない。
・選考のピークが分散することで、4月〜5月にスケジュールの空白が少しできてしまう。
・選考期間がずっと続くため、疲れたりダレたりする。
といった変化が「やるべきことをぶらさず、きちんとやること」を邪魔してくるはずです。


特に4月〜5月にスケジュールの空白ができることは、就活生に焦りを生み、無駄な行動を誘発すると思います。
具体的には、
・出願できる企業が増えるので、当初受ける予定のなかった会社にも多数エントリーしてしまう。
・本命企業の選考が始まる頃、優先順位の低い企業の選考に時間をかけてしまう。
・受ける数が増える分、落ちる数も増えるため(これは全員共通)、ストレスを溜めてしまう。
といったことです。


このような状況にならないためのポイントを以下2点挙げておきます。



【ポイント1】選択と集中
「出願する企業が多くなり過ぎること」には一番注意すべきです。
時間的余裕が出来たからと言って、震災前には受けない予定だった企業に出願し始めると、
本命企業の選考に注力できなかったり、どの会社の選考でも中途半端な成果しか出せなくなります。
少し不安かもしれませんが、出願企業を絞って、優先度の高い会社に注力する方が良いと思います。
(そもそも震災に関わらず、むやみに多くの企業に出願することは良い結果を生みませんが)



【ポイント2】「やるべきこと且つ変えられること」に時間を使う
当然ながら、時間的余裕ができることはデメリットばかりではありません。その時間を有意義に使えばいいだけです。
そのためには、自分が「やるべきこと」(志望する企業の選考にプラスになること)で
且つ「変えられること」(自分自身の行動、思考、これから先の準備など)に注力することが大事です。


前述した通り、就活の基本は変わらないわけですから、志望動機と自己PRの双方で不足している部分を補えばいいと思います。特に自己PRではケースワークやGDで評価されるスキルに加え、面接で自分のスキルを証明できる「経験」が重要です(詳しくは2/28のエントリを参照)。
ただし、経験とは過去のことに限る必要はなく「現在進行形」の経験でも良いのです。
時間的余裕ができたのであれば、就活タスクを離れ、自分がやりたいと思う活動に時間をつぎ込むのもありだと思います。
その活動に対する(時間的)投資が、面接で語れる「経験」となり、ひいては就活の結果をより良いものとするはずです。


また、ケースワークやGDで評価できるスキルは勉強会で学べば、比較的短期間に強化できます。
これまで一度も勉強会に行ったことがない学生さんは、勉強会に行くor企画するなどして、スキル強化を図ることも効果的だと思います。




■特に震災の影響が大きい学生さんについて


◆被災地の学生さん
前エントリにも書いた通り、現時点では身の回りのことを優先した方が良いでしょう。
その上で就活を今年できるようであれば、4月上旬頃までにはネットを不自由なく使える場所に移動した方が良いと思います。
そして、被災者であることを企業にしっかりと伝え、特例対応を必ず受けること。
今回は企業にとってもイレギュラー対応になるため、自分から名乗り出ないと企業が対応できない可能性があります。


◆公務員試験を併願する学生さん
5月〜6月に試験がある場合、選考延期はかなりの影響を与えます。
就活との両立も可能ではあるものの、出願する企業を絞らないと試験勉強の時間を十分に確保できず、虻蜂取らずになります。
両立方針を変えないのであれば、出願する企業に優先順位をつけ「受けない」という選択をすることも必要だと思います。


◆6月に教育実習もある学生さん
6月に教育実習がある学生さんは、6月選考スタートの企業を受けることは難しい状況になると思います。
(教員採用の1次試験が7月に控えていることもありますし)
ですので、まずは速やかに教育実習の時期を10月に変更できないか、大学や実習校に相談すべきだと思います。
それが無理な場合には、夏採用〜秋採用があるかどうか、特例的に被災地の学生と同様の対応をしてもらえないか、について企業に問い合わせると良いと思います。



■最後に


「最近の学生は・・・」という言説はいつの時代もありますが、いつも思うのは「学生は思ってるよりもずっと優秀だ」ということです。そして、今年の就活が難しい局面にあるのは、景気や地震といった環境要因の方が大きいと私は思います。


優秀な学生さんたちがこの厳しい環境を打破する上で、私のエントリが微力ながらでも一助になれば嬉しいなぁと思います。就活生の皆さんは、震災後の就活を必ず勝ち抜いてください。応援してます!



■追記
本エントリについてtwitterでコメントを頂きましたので、追記させていただきます。


♦就活コンサルタント常見陽平さん(@yoheitsunemi)より

「学生ではどうしようもないこと」をちゃんと分けているのがよい


常見さんも学生にできること・できないことを認識することの重要性を説かれています。
就活時期の短期決戦の最中であればなおさら、「自分で変えられること」に注力することが必要でしょう。


♦採用支援事業の株式会社istの飯田社長(@yuji_iida_719)より

選考のやり方自体は大きく変わりませんから、就職活動生の皆さんは、各企業の情報をこまめに集め(DM自粛中なので、自分から情報集めに行かないとダメ!)、しっかり準備することです。


あえて補足すると、今回の震災は来年の就職活動にも大きく影響を与えると思います。これまでは夏インターンを行う会社が多かったですが、倫理協定の改正と今回の選考後ろ倒しで、実施できなくなる企業も多くなります。来年は、本格的な選考時期の後ろ倒し元年になりそうですね。


DM自粛の件、ナビ媒体からのDMが自粛されている場合が多い、ということです。選考が後ろ倒しになる場合、プレエントリー済みの企業からは、何らかの形で連絡が来ることが多いと思います。


企業の求める人物像が大きく変わるわけではありませんし、遅い時期に選考を受けることになったからといって、不利になることもありません。被災地の皆さんは、決して焦る必要はありません。まずは、自分や家族の生活の立直しに力を注いでください。一刻も早い復興をお祈り致します


今回のエントリは学生(就活制)視点で書きましたが、企業の採用活動全体へのインパクトについても言及いただきました。
学生さんに関するところでは「企業の情報発信が変化する」という点が一番大きいと思います。
今回の地震では多くの企業も「被災者」です。そのことを鑑みた上で、自ら情報を取りに行くことが大事だということです。